伝説の男

大学時代の先輩にものすごく豪快な方がいまして、
部活でもいろんな意味で多くの伝説を作った方で、
競馬でも、よく知らないのに買いまくりで大損こいたことがあるんです。
その先輩から今日14時ごろ、電話があったんですよ。
先輩「今日は競馬場に行っているのかい?」
僕「いや、家で競馬みてます。」
先輩「マジで?あのさ、今日結構面白いレースがあるって聞いたんだけど
馬券買ってもらったりとかできる?」
ははあ、バイト先でお世話になっている別の先輩から、なにか話を聞いたな。
僕「買えなくはないのですが、今口座に9千円しか入っていないんですよ。」
先輩「マジで?それじゃ足りないなあ。」
僕「(足りないんかい!)」
先輩「じゃあ、俺んちから一番近いウインズってどこかな?」
おお、買う気満々だ!すぐに思いついたので場所を教えると、
先輩「なるほど、でもそこは『僕』はすぐ来れないよね?」
僕「え、僕ですか?確かに時間がかかりますけど、なぜでしょう?」
つまりこういうことらしい。
今日の阪神Cの話を聞いて、チラッと馬を見たものの、
4頭しか買う馬を決めていないので、僕のアドバイスでもう4頭ほど選んで欲しい。
また、馬券の買い方をちゃんと教えて欲しい。
ふむ、確かにこれは電話やメールでは面倒そうだ。
夕方から友人と食事をする約束をしているが、
競馬が終わってからでも間に合うだろうし、
家にいても暇だから、外に出るか。
僕「いいですよ。それなら、ウインズ渋谷がお互いの中間くらいなんで、
そこで集合しましょう」
先輩「おお、マジで?お前は本当にいいやつだな!」
先輩の決まり文句も出たところで、渋谷に向かう。
僕のほうが明らかに先に着きそうだったので、
渋谷で遅めの昼飯を食っていると電話が。
先輩「すまん、いろいろやってたらつくのが渋谷駅に着くのが15時半になりそう。」
僕「え?阪神Cは発売締め切りが43分なので、急がないといけませんよ。」
駅から渋谷ウインズまでは、歩いて8分くらいかかる。
埼京線からくれば半分くらいでつけるが、先輩は別の路線だ。
予想して購入するまでの時間を考えたら、かなり厳しい。
先輩「わかった!ダッシュで来るわ。先におすすめの選んどいて。」
僕「はい、では先輩が今決めている馬を教えてくれませんか?
おすすめのも含めてあらかじめマークしておきますよ。
買い方は3連単の1頭軸マルチですか?」
先輩「まるちって何?」
僕「えっと、HMX-12・・・じゃなくて、軸馬を1頭なり2頭なり選んで、
馬券に絡めることを固定する買い方です。」
先輩「あー、違う違う。BOXで買うんだ。」
僕「ぼ、BOXですか!?」
なるほど、そりゃ足りない。いや、1頭軸マルチでも足りてなかったのだが。
3連単8頭BOXとなると8×7×6=336通り。
当たってかつ波乱にならないと、プラスにならないわけです。
先輩「そうそう、今から買いたい馬を教えるね。スズキなんとか」
僕「スズカフェニックスですね。」
先輩「それそれ、あとエイシンドーバー、ブルーなんとか、フサイチなんとかで」
僕「エイシンドーバーブルーメンブラットフサイチリシャールですね、了解です。」
昼飯を食い終わり、ウインズへ向かって、マークシートに記入を始める。
ひとまず、先輩がおさえてなくて、僕の予想と重複していない馬は5頭。
あと1頭絞るか・・・
ドラゴンウェルズとプリサイスはおさえるべきだよね・・・
あとは、阪神得意だしジョリーダンスかな。そして・・・シンボリグランにしよう。
そうして8頭を記入。
フェアリーSをハズして落ち込んでいると、先輩から電話が。
ダッシュで向かっているという先輩は、駅から走って3分で到着したのだった。
先輩「ごめんね、遅くなって。」
僕「いえいえ、あ、先輩、ちゃんと選んでおきましたよ。
時間がないので買いに行きましょう。」
先輩「あー、どんなの選んだか見せてくれる?」
そこで新聞を見せ、ちょっと詳しく説明。
先輩も納得したようで、財布から3万4千円を取り出し、件の馬券を買ったのでした。
馬を選んだプレッシャーと、自分の予想が当たるかのドキドキにはさまれながら
レースはスタート。人気薄の馬が粘りそうになり場内はざわめくも、
直前で1番人気のスズカフェニックスが交わし、大勢が一変したところでゴール。
先輩「うおー!どうなったんだ!」
僕「スズカが勝ちましたね。2着は芦毛で黒い帽子だったから、ジョリーダンスです!
3着は外からブルーメンがきてたんですが、内のローレルゲレイロも粘っていたので、
ちょっときわどいですね・・・ブルーメンだったら当たりですが・・・」
先輩「マジかよ!」
スローを見ると、なんとか外が交わしたところがゴール。
僕「先輩!3着ブルーメンですから的中ですよ!!」
先輩「うおおお!やったー!!」
僕「しかも、ジョリーダンス人気ないですから、これは配当が期待できると思います!」
調べたところ1110.9倍。11万馬券的中である。
事実を伝えたところ先輩大興奮。
先輩「マジありがとう。お前のおかげだよ!」
僕「いやいや、先輩もブルーメンをしっかり選んでましたから。
僕ならたぶん買ってないです。」
お互いをほめあいながら喜ぶ僕ら。
僕が外れたことは、この際どうでもいい。
勢いに乗った先輩はこう言い出した。
先輩「よし!最終レースも買おう!」
僕「え、買うんですか!いいですけど、買うとしても軽くにしときましょう。」
プラス7万7千円なのだから、もうやめたほうがいいと思った僕は、そうアドバイス
しかしあれも必要、これも必要と迷った先輩は、
結局、3連単7頭BOX2万1千円を購入することになったのでした。
うーん、人気薄でも面白い馬を教えられたし、うまく絡めばなんとかなるかな・・・
買ったのは阪神の最終レース。
レースは、抜けた1番人気の1番の馬を6番人気の6番の馬が交わしたところがゴール。
先輩はどっちも買っていた。
問題は3着なのだが・・・
先輩「3着は何だった?」
僕「うーん、赤い帽子が見えたんですよね。
1頭は勝った馬ですから、もう1頭は9番人気の5番の馬ですね。
見間違いでなかったら・・・当たってますよ!」
先輩「マジかよ!頼む!」
スローを見たところ、見事に3着は5番。
配当を調べたら415倍。4万馬券でまたもやプラス。
先輩はさらに興奮。
先輩「よし!うまいもんを食べに行こう!おごる!」
僕「あ、でも僕食事の約束してて・・・」
先輩「え、誰なの?」
僕「先輩も部活で一緒だった人ですよ。」
先輩「よし!一緒に連れて行こう!」
僕「マジですか(笑)」
トータル9万8千円プラスだった先輩は、大盤振る舞い状態!まさに吉宗!
そうして、新宿で友人と合流した後、新宿のカニ&ふぐ&肉料理の店へゴー。
1万円のコースを頼むなどの大盤振る舞いで、会計は5万。
うん、さすがに神経が磨り減りました(笑)
でもうまかった・・・
カニやふぐってあんなにうまいものだったんだ・・・
人生で最高の贅沢を味わった僕は先輩と、1週間後中山競馬場で再会することを
約束し、帰路についたのでした。
次週、先輩が再び伝説の男になるかどうかは、誰も知らない・・・
ただこれだけはいえる。
先輩は来週も最低5万はつぎ込む。
当たるかどうかはそのとき次第。